1.学校の実態
(1)地域・学校の特色
本校がある広島市は、広島県の南西部にあり、人口100万人を抱える中四国最大の都市である。本校は広島市の中心部に位置し、
広島城・県庁・デパートなどの大型商業施設、バスターミナルなどが近隣にある。本学区は市内最大規模の公営住宅群であり、25年ほど前より中国残留邦人の引き揚げ後の定着地として入居が始まった。その後残留邦人の子どもとその家族が私費で順次呼び寄せられ、本校にも中国からの帰国児童が編入するようになった。
近年当公営住宅の高齢化とともに、全校児童数は減少の一途をたどっていたが、ここ数年は横ばい状態にある。その中で、帰国児童や、保護者の留学や婚姻について来日した児童数は増加しており、昨年度は過去最多であった。全校児童に占める帰国・入国児童の割合は3割を超え、本校の特徴の一つにもなっている。
(2)帰国・入国児童在籍数の推移
| 年度 |
4
|
5
|
6
|
7
|
8
|
9
|
10
|
11
|
12
|
13
|
14
|
15
|
16
|
17
|
18
|
19
|
20
|
全校
児童数 |
326
|
317
|
288
|
259
|
240
|
199
|
198
|
193
|
172
|
161
|
144
|
142
|
153
|
167
|
177
|
177
|
168
|
| 帰国 |
24
|
19
|
20
|
27
|
32
|
35
|
40
|
43
|
44
|
45
|
35
|
38
|
34
|
40
|
46
|
49
|
41
|
| 入国 |
8
|
10
|
14
|
13
|
7
|
1
|
1
|
8
|
9
|
8
|
8
|
5
|
8
|
16
|
17
|
17
|
13
|
| 帰・入国合計 |
32
|
29
|
34
|
40
|
39
|
36
|
41
|
51
|
53
|
53
|
43
|
43
|
42
|
56
|
63
|
66
|
54
|
2.取り組みの概要
(1)校内における位置付け
平成16年度より「日本語学習教室」から「世界なかよし教室」という呼称に変わった。児童は通常の学級に在籍しており、本校ではこの学級を「在籍学級」呼んでいる。「在籍学級」に籍を置きながら、児童の日本語能力や適応の実態に応じて「世界なかよし教室」において指導を受けている。
(2)運営についての基本的な考え方
国際理解教育の一環としての帰国・入国児童教育とする。帰国・入国児童の日本語指導や教科指導が主となる。帰国・入国児童の学力の基となる日本語の確立を保証し、安心して学校生活を送れるように、日本の子どもたちとの言語や文化の交流など、双方が学び合い、理解し合える場としての教室のあり方を工夫していく。そのためにも学級担任や保護者と連携をとりながら進めていくことが必要である。多文化理解の発信の場としての役割もめざしている。
(3)指導方法と指導内容
@取り出し指導
専任指導者(加配教員)と非常勤講師とが、児童の実態に応じて、取り出し指導(世界なかよし教室での指導)を実施している。
取り出し指導時間の設定については、本人の日本語能力はもとより、学校生活の適応状況にも配慮して調整するのが基本的なスタンスである。通例、初期指導の必要な児童の場合、在籍学級の国語科や社会科の時間をすべて取り出し指導の時間に当てることになる。たとえば、国語科6時間のうち、3時間は在籍学級で、残りの3時間は取り出し指導の時間という指導形態は、原則としてとっていない。(ただし、図書の時間は在籍学級、という場合もある。また、学習内容によって在籍学級で効果的な学習ができる場合は 在籍学級での学習とする場合も例外としてはある。)
取り出し指導では個々の児童の実態を捉えながら、主として以下のような内容を指導している。
@)生活指導
日本の生活および学校生活に慣れるよう支援する。日本に来て間のない児童は言葉がわからないだけでなく、母国との習慣の違いにとまどい、不安でいっぱいである。通学路を一緒に歩き、トイレの使い方や脱靴室のきまりなどから一つひとつ現場へ行って丁寧に指導している。また、配布されたプリントの説明や、行事の説明をし一緒に準備するなどして児童が不安を持つことなく活動できるように心がけている。
A)日本語指導
あいさつや身の回りのものの名前から、日本語能力検定試験2級程度までの学習をしている。ただし日本語の習得には年齢、母国での学習歴、性格、適応状況などによって個人差が大きいため、指導法や指導期間は実態を確実に把握した上で個人に対応させる必要がある。中国帰国児童については、今後一生日本で暮らしていくことを前提として、中学進学、その後の進路にも対応できる力をつけたいと望んでいる。
B)教科指導
実技教科については最初から一斉授業を受けさせている。しかし、水泳や器械運動、リコーダーなど未経験のものは事前に指導する。算数や理科は用語を指導し、未習の箇所があれば補充する。
A入り込み指導 社会科・算数科・理科を中心に在籍学級の担任・専科担当の授業において帰国・入国児童のそばに付き添い学習援助をしている。日常会話ができるようになっても学習言語の獲得をはじめ学習内容の理解・定着が不十分な児童が少なくない。一斉指導の中での個別指導が必要不可欠である。
B全員会
下学年全員会−毎月1回。仲間づくりを中心に、集団遊び、栽培活動、工作、料理などを行っている。
上学年全員会−3月。6年生のお別れ会として、日本の料理を作って一緒に食べる活動をしている。
Cその他
@)世界なかよし教室の開放
雨天の日の休憩時間を中心にして教室を開放するようにしている。帰国・入国児童にとっても、それ以外の児童 にとっても交流の場となっている。
A)家庭訪問
年度始めに1年生の帰国・入国児童家庭と、2年生以上の取り出し指導対象児童家庭に家庭訪問をしている。ま た、必要があれば随時家庭訪問をし、保護者と連携をとるようにしている。
B)個人懇談と成績表渡し
世界なかよし教室独自の学習の成績表を作成し、学期ごとに個人懇談を行っている。
C)帰国・入国児童保護者の交流の場作り
毎年秋に開催されるPTA主催によるバザーで餃子作りを行っている。帰国・入国児童保護者が協力して餃子を 作ることを通して、これら保護者間の交流促進を図るとともに、ほかの保護者との交流の契機となることをねらう場 として、長年に渡って開催されている。
(3)指導計画
| 時 期 |
段 階 |
指導時間・指導事項 (日本語) |
使用教材 |
指導事項(教科他) |
編入後 1〜2日 |
オリエンテーション |
朝の会・帰りの会・給食・そうじ以外の時間に取り出し指導。 名前、あいさつ、基礎単語 |
絵カード |
学校説明(校内・学区) 書類(個人調査票・保健関係調査票など) |
編入後 1週間 |
基礎日本語指導期間 |
実技教科以外の時間に取りだし指導。 緊急性のある生活・学校用語、ひらがな |
・にほんごをまなぼう ・ひろこさんのたのしいにほんご1 ・ひらがな練習帳−よんでみよう− ・ 〃 −かいてみよう− ・文字カード、絵カード |
算数は進度を確認し、未習得の内容があれば指導する。算数用語を指導後、一斉指導に入れる。 |
1〜2年 (児童の 習得状 況による) |
初級日本語指導期間 |
国語・社会科の時間に取り出し指導。状況によって社会は在籍学級で学習。
・文型練習 ・文字学習(ひらがな・カタカナ・漢字) ・語い学習 ・会話練習 ・表現練習
|
・ひろこさんのたのしいにほんご1・2 ・ひらがな練習帳−よんでみよう− 〃 −かいてみよう− 〃−すらすらよんでみよう− ・こんにちは ・ことばカード(名詞・動詞・形容詞・擬音語
擬態語) ・「教科書ワーク 漢字」 ・コンピュータソフト 「にほんごをまなぼう」 「外国人用日本語のきそ」 ・「初級日本語 ドリルとしてのゲーム教材
50」 |
理科は用語の指導後、一斉指導に入れる。状況に応じて入り込み指導する。 体育、音楽、家庭科、図工は用語を指導する。状況に応じて未経験の内容を指導する。 国語科は日本語学習が進んだ後、1年生の教科書の短い説明文や物語を用いて、慣れていくようにする。 |
2〜4年 (児童の習得状
況によ る) |
中級日本語指導期間 |
国語科(図書)もしくは放課後に取り出し指導。
・語い学習 ・表現練習 ・作文練習 |
・にほんご1・2・3 ・日本語能力検定試験3〜2級問題 ・「くもんの小学ドリル ことばと文章」 ・コンピュータソフト 「NIHONGO」 |
状況により、遅れた教科を指導する。 |
3.教材一覧
| 区 分 |
名 称 |
発行機関 (発行年) |
内 容 |
| 教科書 |
にほんごをまなぼう (及び、同教師用指導書) |
ぎょうせい(1992年) |
学校生活における初期日本語学習教材 |
| 教科書 |
にほんごをまなぼう2 ( 〃 ) |
ぎょうせい(1994年) |
教科学習における 〃 |
| 教科書 |
にほんごをまなぼう3 ( 〃 ) |
ぎょうせい(1995年) |
〃 〃 |
| 教科書 |
ひろこさんのたのしいにほんご1 |
凡人社 (1991年) |
児童向け初級日本語学習教材 |
| 教科書 |
ひろこさんのたのしいにほんご2 |
凡人社 (1995年) |
〃 |
| 教科書 |
にほんご1・2・3上下(及び同練習帳・単語集 |
アルク (1996年) |
初級〜中級日本語学習教材 |
| 教科書 |
たのしいこどものにほんご |
凡人社 (1992年) |
児童向け初級日本語学習教材 |
| 教科書 |
ひろしまで学ぶにほんご もみじ(及び、同指導マニュアル) |
(財)ひろしま国際センター (1997年) |
社会人向け初級〜中級日本語学習教材 |
| 教科書 |
しんにほんごのきそ |
海外技術者研修協会 (1990年) |
〃 |
| 教科書 |
初級日本語 ドリルとしてのゲーム教材50 |
アルク (1992年) |
ゲーム形式の文型練習のためのテキスト、及び絵カード、語彙カード |
| 教科書 |
中国からの帰国者のための 看・ ・学 −はじめの日本語− |
文化庁 |
社会人向け初級日本語学習教材 |
| ドリル |
ひろこさんのたのしいにほんご ぶんけいれんしゅうちょう |
凡人社(1994年) |
初級日本語学習教材 |
| ドリル |
ひろこさんのたのしいにほんご2 ぶんけいれんしゅうちょう |
〃 (1995年) |
〃 |
| ドリル |
ひらがな練習帳1 −読んでみよう− |
(財)中国残留孤児援護基金(1997年) |
日本語発音・語彙学習教材 |
| ドリル |
ひらがな練習帳2 −書いてみよう− |
〃 |
〃 文字 〃 |
| ドリル |
ひらがな練習帳3 −すらすら読んでみよう− |
〃 |
〃 発音・文字 〃 |
| ドリル |
カタカナ練習帳1 −読んでみよう− |
〃 |
〃 |
| ドリル |
カタカナ練習帳2 −書いてみよう− |
〃 |
〃 文字 〃 |
| ドリル |
カタカナ練習帳3 −すらすら読んでみよう− |
〃 |
〃 発音・文字 〃 |
| ドリル |
ひらがなおけいこ |
くもん出版(1997年) |
〃 文字 〃 |
| ドリル |
カタカナおけいこ |
〃 |
〃 |
| ドリル |
新漢字おけいこ |
〃 |
〃 |
| ドリル |
こんにちは |
大阪府教育センター |
〃 |
| ドリル |
教科書ワーク国語 漢字(1〜6年用) |
文理 |
実態に応じた漢字学習の定着 |
| ドリル |
くもんの小学ドリル ことばと文章 |
くもん出版 |
実態に応じた文と語法学習の定着 |
| カード |
絵で教える日本語 |
凡人社 (1989年) |
絵カード(名詞・動詞・形容詞) |
| カード |
くもん式の大判ひらがなことばカード 1・2・3 |
くもん出版(1995年) |
絵カード(名詞) |
| カード |
くもん式の大判漢字カード |
〃 |
絵カード(漢字) |
| カード |
ソニートーキングカードシステム |
ソニー |
音声の出るカード |
| カード |
自作語彙カード |
基町小学校(2000年) |
絵カード(名詞・動詞・形容詞) |
| コンピュータソフト |
にほんごをまなぼう |
文部科学省(2000年) |
児童向け初級日本語学習ソフト |
| コンピュータソフト |
NIHONGO |
愛知県豊橋市立南部中学校 (1996年) |
児童生徒向け初級〜中級日本語学習ソフト |
| コンピュータソフト |
漢太郎 |
富士通ラーニングメディア(1995年) |
漢字学習ソフト |
| コンピュータソフト |
スーパー日本語大辞典 |
学研 (1998年) |
国語・漢和・古語・類義語・ことわざ辞典ソフト |
| コンピュータソフト |
マイペディア99 |
日立デジタル平凡社 (1999年) |
百科事典ソフト |
| コンピュータソフト |
マルチブック小学校特別活動 |
ベネッセ(1998年) |
お話作り・熟語学習ソフト |
| 辞典 |
くもん ことば絵じてん |
くもん出版(1993年) |
絵辞典 |
| 辞典 |
こども ことばえじてん |
角川書店(1988年) |
〃 |
| 辞典 |
こども ことばのつかいかた絵じてん |
三省堂 (1998年) |
〃 |
| 辞典 |
こども きせつのぎょうじ絵じてん |
〃 〃 |
日本の生活・文化 絵辞典 |
| 辞典 |
絵びきかん字じてん |
小学館 (1996年) |
漢字辞典 |
| 辞典 |
日本語擬態語辞典 |
ジャパンタイムス (1989年) |
擬声語・擬態語辞典 |
| 辞典 |
日中擬声語・擬態語辞典 |
東方書店(1994年) |
日中擬声語・擬態語辞典 |
| 辞典 |
解明日本語アクセント辞典 |
三省堂 (1996年) |
日本語アクセント辞典 |
| 辞典 |
日中辞典 |
小学館 (1987年) |
日中辞典 |
| 辞典 |
中日大辞典 |
大修館書店(1996年) |
中日辞典 |
| 辞典 |
中国語辞典 |
岩波書店(1996年) |
〃 |
| 辞典 |
現代中国語辞典 |
光生館 (1989年) |
〃 |
| 辞典 |
中国語図解辞典 |
大修館書店(1993年) |
中国の生活・文化 図解辞典 |
| 辞典 |
新編小学生字典 |
人民教育出版社(1983年) |
小学生用中国の漢字辞典 |
| 辞典 |
易董日語詞典 |
新潮社(1995年) |
中国語による日中辞典 |
| 辞典 |
絵ときさんすうじてん |
小学館(1997年) |
算数 絵辞典 |
| 指導参考書 |
外国人児童生徒のための日本語指導 1.カリキュラム・ガイドラインと評価 |
ぎょうせい (1998年) |
参考書 |
| 指導参考書 |
同2.算数(数学)理科の教科書−語彙と漢字− |
〃 〃 |
〃 |
| 指導参考書 |
同3.中国語版文法説明 |
〃 (1999年) |
〃 |
| 指導参考書 |
異文化理解のための日本語教育Q&A |
文化庁 (1994年) |
〃 |
| 指導参考書 |
国際化と日本語 |
〃 (1995年) |
〃 |
| 指導参考書 |
日本語教育 |
〃 (1996年) |
〃 |
| 指導参考書 |
中国帰国者のための日本語教育Q&A |
〃 (1997年) |
〃 |
| 指導参考書 |
初めての日本語教育1 |
凡人社 (1996年) |
〃 |
| 指導参考書 |
日本語教育演習シリーズ 教えるためのことばの整理 |
〃 (1994年) |
〃 |
| 指導参考書 |
〃 教え方の基本 |
〃 (1995年) |
〃 |
| 指導参考書 |
基礎表現50とその教え方 |
〃 (1991年) |
〃 |
| 指導参考書 |
子供のための日本語教育 |
アルク (1996年) |
〃 |
| 指導参考書 |
中国語を母語とする日本語学習者のための 「たのしい理科」 |
国立教育研究所 (1994年) |
〃 |
| 指導参考書 |
〃 「中学校理科2分野・上下」 |
〃 〃 |
〃 |
| 指導参考書 |
小学校学年別 日本と中国の漢字対照表 |
基町小学校(1997年) |
日中の漢字の相違点対照表 |